介護保険制度が2000年に開始され22年が経過しました。
現在,全国の要介護認定者は,開始当初の3倍を超え,保険料は全国平均で開始当初の2倍以上の金額になっています。
介護保険サービスを利用して,その利用料が家計の負担になっているという方やそのようなご家庭もあるかもしれませんね。
今回は,そんな時に確認してみる項目について優先順位の高いものから書いてみます。
特別障害者手当
この手当は,高齢者に限らず,特定の施設に入所せずに自宅などで生活している,20歳以上の重度の障害のある方へ支給されるものです。
支給額は,令和4年4月現在,月額27,350円となっています。
支給を受けるには,市区町村の障害福祉担当窓口へ申請し,認定を受ける必要があります。また,本人やその配偶者,扶養義務者の前年の所得が,一定額以下である必要があります。
まずは,お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口へ,相談してみることをお勧めします。
要介護度
介護保険サービスを利用している方は,必ず要介護認定を受けていて,要支援1または2,もしくは要介護1~5のいずれかの介護度に認定されています。
その認定を受けている要介護度は,現在のご本人の状態に沿ったものでしょうか。
要介護度は,利用料に大きく関係しています。介護度が重いほど多くのサービスが利用できますが,その分利用料は高くなります。
逆に,介護度が軽いとその分利用料は安くなりますが,介護保険を利用して受けられるサービスが限られてきます。
ですので,「介護度が軽くなった方が,利用料が安いのでよい」と一概には言えません。
何よりもご本人の状態に合った介護度であることが大切です。
また,「特別養護老人ホームは要介護3より重い方が入所の対象」といったように,施設によっては入所するための介護度に指定があり,介護度によっては,より安価な施設へ入所できる可能性もあります。
利用料や受けているサービスの料などに満足できていない場合は,担当のケアマネジャの方に相談して,要介護認定の変更申請や,サービスの内容,入所施設の変更等を検討してみてください。
施設にも相談員やケアマネジャはいますので,相談してみられてもよいでしょう。
負担限度額認定
この制度は,特定の施設サービスを利用されている方を対象とした制度で,認定を受けると利用料の居住費や食費の上限額が設定され,一定額を軽減することができます。
その対象となる施設サービスが以下になります。
- 特別養護老人ホームへの入所またはショートステイ
- 介護老人保健施設への入所またはショートステイ
- 介護療養型医療施設(介護医療院)への入所(入院)
検討する前に注意する点として,認定を受けるためには,基本的に本人を含む世帯全員の住民税が非課税である必要があります。
そして,4つの段階のいずれかで認定を受けますが,それぞれに,本人または配偶者がいる場合は夫婦合算しての,預金など資産の上限額が設定されています。
資産が設定額を超えると認定を受けられないということですね。
令和3年8月1日より,認定を受けるための資産条件が厳しくなっていて,単身だと500万円~1,000万円,夫婦だと1,500万円~2,000万円の設定が段階によって定められています。
詳しくは,お住まいの自治体のホームページや役所の担当課にてご確認ください。
利用者負担額軽減制度
この制度も,利用料を軽減する制度ですが,サービスを提供する社会福祉法人が市町村へ届出を行い実施しているもので,低所得者の方を対象としています。
そして,対象となるサービスが以下になります。
- 特別養護老人ホームへの入所またはショートステイ
- デイサービス
- 訪問介護
検討する前に注意する点としては,サービスの提供を受けている社会福祉法人が,自治体へ制度の実施について届け出ていないと利用できないということです。
端的に言うと,社会福祉法人で行っている法人とそうでない法人があり,行っている法人の方が少ないでしょう。
そして,「負担限度額認定」と同じく,介護認定を受けている本人の世帯が住民税非課税である必要があります。
預金など資産の条件も同じくありますので,まずは,サービスの提供を受けている社会福祉法人へ制度を提供しているか確認してみることをお勧めします。
高額介護サービス費
この制度では,介護保険サービスの利用料が,一定の限度額を超えた場合に,その超えた分が払い戻されます。
限度額は一月を基準として計算され,住民税が課税されている一般世帯で44,400円/月,住民税が非課税ので,前年度の収入が80万円以下の世帯が24,600円/月を超えた分が還付されます。
令和3年8月より,年収が約770万円を超える世帯は,一般世帯よりも限度額が高く設定されました。
この制度の対象となった際には,自治体等の介護保険者より,基本的に案内通知が届きますので,郵便物を確認するようにして,忘れずに申請書類を提出することが大切です。
対象であるはずなのに案内通知が届かないという方は,介護保険者証に記載のある介護保険者(市区町村)へ問い合わせてみてください。
高額介護合算療養費
この制度は,介護保険の利用料と医療保険の医療費の年間(8月~翌7月)の合計が,限度額を超えた場合に,その超えた分が払い戻される制度です。
限度額については,70歳以上の方については,住民税を支払っている一般世帯で56万円/年,住民税を支払っていない世帯で31万円/年,また,それより収入の少ない世帯,逆に収入の多い世帯について,段階的に設定されています。
また,70歳未満の方については,70歳以上よりも限度額が高く設定されています。
この制度の対象となった際には,加入されている医療保険者より,基本的に案内通知が届きますので,郵便物を確認するようにして,忘れずに申請書類を提出することが大切です。
対象であるはずなのに案内通知が届かないという方は,医療保険者証に記載のある医療保険者へ問い合わせてみてください。
確定申告
介護認定を受けて介護保険サービスを利用して利用料を支払っている場合,確定申告時に「障害者控除」と「医療費控除」を受けられる可能性があります。
納める税金の額を軽減できたり還付を受けられるということです。
【障害者控除】
障害者に当たる場合,一人につき27万円,特別障害者に当たる場合は,一人につき40万円の控除が受けられます。
その対象となる人の範囲については,国税庁のホームページへ掲載してありますので,確認したり市区町村の担当課や税理士さんへ相談されてみてください。
ご本人やその世帯の収入が少ない場合には,申告することで,場合によって住民税が非課税となる可能性もあります。
住民税が非課税となれば,医療保険や介護保険の保険料が軽減されたり,前述した施設入所時の限度額認定を受けられる可能性も出てきます。
【医療費控除】
介護保険サービスには「医療系サービス」と「福祉系サービス」があります。
基本的に医療系サービスの利用料については医療費控除の対象となります。そして,福祉系サービスだからといって,すべてが医療費控除の対象外というわけではありません。
居宅サービスで使用したオムツ代についても,医療費控除の対象になりますので,国税庁のホームページや市区町村の担当課,税理士さんへ相談してみることをお勧めします。
併せて,医療費控除の還付申告については,過去5年間を遡って申告することができますので,見直してみてもよいかもしれません。
介護用品やタクシー券の支給
多くの市区町村で,要介護認定を受けている方を対象に,介護用品やタクシーを利用する際に使用できる割引券の支給をしています。
その介護用品の種類や対象者の区別は,市区町村によって異なってきます。
市区町村のホームページを確認したり,担当のケアマネジャの方へ問い合わせてみてはいかがでしょうか。
以上,当相談所で思い浮かぶ確認事項の概要をざっとご紹介しました。
心当たりのある項目がありましたら,身近な福祉関係者や市区町村の担当課へ問い合わせてみてください。
当相談所へご相談くだされば,ご本人の現在の状況をお聴きし,ご家庭の事情等も鑑みたうえで,他の制度も含めて一緒に検討いたします。
初回のご相談(60分)は無料となっています。よろしければご連絡ください。